多摩川のウラギンシジミ

多摩川河川敷で大きな葉を広げて、四方に蔓を伸ばし、あちこちに絡みつきながらどんどん広がるクズ。平面的に広がるだけかと思えば、上の写真のように高いクヌギの大木などにも絡まり、どんどん上の方まで這い上っているものもあります。何という生命力の強さ。どの蔓も今はちょうどたくさんの花穂に赤紫の花をいっぱいつけています。ただ、花穂の大半は大きな葉の下に隠れているため余りたくさんは見えませんが、少し近づいただけで、かなり濃厚なクズの花の香りがします。

その花を目当てに多くの虫が集まってきます。なかでもウラギンシジミとウラナミシジミはこのクズを生活の場としています。蜜を吸うことももちろんですが、ともに花穂に卵を産み付けて、幼虫は花を食べて育ちます。したがって、ある意味のライバルでもあります。陽当たりのいい場所ではウラギンシジミが盛んに高速で飛び回り、そして見晴らしのいい葉の上でテリトリーを張り、オレンジ色の翅を広げて見せます。そこへ侵入者が近づくといきなり2頭が激しい空中戦を開始します。なかなかカメラでは追えないほどの高速での空中戦です。肉眼で見ていても、あっという間に2頭そろって急上昇したり急旋回したりして見失ってしまいます。そして時々、翅裏の銀色が陽の光でキラキラ光るのが見えるくらいです。
ウラギンシジミ同士はもちろん、ウラギンシジミとウラナミシジミが競い合うこともあります。これは別の日に、ウラギンシジミとウラナミシジミがさんざん追いかけあいをした後、至近距離でクズの葉に止まったところです。写真右上のウラナミシジミはあまり鮮明ではありませんが。

筆者は先日から、クズの花穂にいるはずのウラギンシジミの幼虫を探しているのですが、今年は今のところまだ見つけることができていません。この幼虫は大変な特技を持っており、以前に飼育した時にその面白さに嵌ってしまい、できればもう一度飼育してみたいと思っています。
ウラギンシジミの幼虫の特技をまだご覧になったことのない方は、このサイトの動画集4のウラギンシジミ(matsさん撮影)の動画を是非ご覧ください。思わず、クスリッとなるはずです。

(Henk)

参考 蝶図鑑 ウラギンシジミ
       ウラナミシジミ

多摩川のウラギンシジミ” に対して3件のコメントがあります。

  1. Sophia より:

    大きなクヌギの木に絡みつきながら伸びていくクズの生命力。同姓?同名、これも雑草の一種であろうと思っったのですが、まさか?と思いなおしネットで確認しました。
    Henkさんのお写真のクズの花は薬草であり料理に使う貴重な葛の花と同じでした。
    栄養価の高い貴重な葛粉100%の物は奈良県の特産品で、常に手に入るものとは思っていませんでしたので、まだ大量に保存しています。95年間生きた母はいつもカタクリ粉のかわりに葛粉を使っていたからです。多摩川の河川敷とはやはり凄い!クズの大木?なんて淀川の河川敷では考えることもできません。
    クズの花の香りはきっとすばらしいのでしょうね。
    ウラギンシジミの動画は目をパチクリしながら何度も拝見しました。
    ウラギンシジミの飼育のご報告を楽しみにしています。

    今回は蝶よりもクヌギとクズの大木に感動してしまいました。

    1. Henk より:

      Sophia さん
      コメント有難うございます。
      このウラギンシジミが生活の場にしているのはまさに吉野葛のクズです。
      ただ、多摩川の河川敷ではクズは蔓を地上では四方八方に、さらに上へも伸ばしクヌギのような高い木があればそれにも遠慮なく絡みつくし、なかなかの荒くれものなのです。貴重な葛粉を採るのはその根っこだと思います。いくらでもありますから、掘りに来られませんか?採り放題ですよ。ですが、絶対買った方が安いこと請け合いです。クズと言えば、漢方薬の葛根湯の葛根もまさにクズの根です。時々お世話になってます。

      1. Sophia より:

        深い山の中でないのなら危険もなさそうだし、昔だったら飛んで行っていると思いますよ。
        新百合ヶ丘にはよく行っていました。あの頃ならついでにピューッと見に行けたでしょう。
        天然のヤマイモも本を見て欲しくなり、田舎の人に頼んで探して頂き掘る所も見学させて頂きました。頼まれた方の苦労を目の当たりにして、以後二度とヤマイモ(天然)堀りに行きたいとは言い出せませんでした。
        天然のクズは山奥に自生しているものと思っていたので、びっくりでした。
        お写真で楽しませて頂きました。
        いつもありがとうございます。

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