テーマ(4) 訪花と飛翔

どうやらカラ梅雨気味のようですが、お天道様と私の予定がうまくすり合いそうにないので、この1週間はテーマを設けてアーカイブ画像を季節には無関係かつ順不同でまとめています。第4回は「訪花と飛翔」、蝶が最も蝶らしい美しい姿を見せるのがこの二つのように思っています。あれもこれもで枚数が増えてしまいました。 mats

まず、「訪花」から:

蝶が花を訪れる瞬間にはいつも息を呑む迫力があります。大まかにはゼンマイ式の口吻が伸びてくるとともに急速に減速して脚も伸びてきてとまるということなのでしょうが、もう少し複雑で、写真を撮ってもなかなか「決まった画像」にはなっていません。撮影後にPCで確認すると100点満点のものなどありません、皆無、ゼロ・・・新鮮な蝶に新鮮な花、構図、躍動感、背景、光の状態、などなど不満をあげつらうときりがなく、結局、次回こそもっときれいに撮ってやろう!・・というのを飽きもせず延々と繰り返しています。

↑ トップはミヤマカラスアゲハ(東京都 4月下旬)。例年より早い発生でしたが、レンゲツツジの状態もよく薄日が差すくらいの丁度いい光加減でした。吸水で地面にべったりと翅を開いたミヤマカラスの写真も翅の様子はよくわかってきれいですが躍動感の点で不満が残ります。

↑ オナガアゲハ(東京都 5月上旬)。山頂のオオムラサキツツジに飛来するオナガアゲハ(オス)。後翅は、前縁部の白い斑がアクセントを添えるが、なんと言っても尾(尾状突起)に至る波を打って流れるような曲線は魅力的。比較的緩やかに飛ぶので撮影はしやすい。

↑ ギフチョウ(神奈川県 4月上旬)。早い個体では3月にも出てくる春の女神とも呼ばれる人気の高いアゲハチョウ。この時期まだ桜は咲いておらず梅で吸蜜している。

↑ モンキアゲハ(東京都 6月下旬)。後翅の薄クリームの紋ですぐ判別できる。大きなヤマユリにとまったので小さく見えているがこのアゲハもかなり大型で山頂に集まる傾向あり。

↑ ナミアゲハ(神奈川県 4月下旬)。アブラナに飛来。最も身近なアゲハチョウであり山椒やミカンの木があればいつの間にか卵が産まれていて、あっというまに丸坊主に、というくらい生命力旺盛なアゲハ。

↑ ヨーロッパタイマイ(フランス アヴィニョン近郊 7月上旬)。ラベンダーで吸蜜。フランス南部からイタリーにかけてよく見かけたアゲハチョウ。

↑ ヤエヤマカラスアゲハ(石垣島 2月下旬)。サンダンカに飛来、吸蜜。一般のカラスアゲハとは別亜種に指定されている沖縄八重山地方産のアゲハでカラスアゲハが青基調なのに対してヤエカラは上品な緑基調で魅力的。

↑ ウスバシロチョウ(東京都 5月上旬)。ヒメウツギで吸蜜するウスバシロチョウ。ウスバキチョウとともに尾状突起もないがアゲハチョウ科に属している。フワフワと優雅に飛びウスバシロの出現は初夏を感じさせる。

↑ アオスジアゲハ(神奈川県 5月上旬)。緑地のハルジオンに飛来、吸蜜スタンバイでゼンマイ式の口吻もまっすぐ伸びきっていて、ほんの僅かシャッターのタイミングが遅かった。訪花の際には急に減速するが普段は目が追いつかないほど速く飛ぶ。

↑ ツマグロヒョウモン(神奈川県 10月上旬)。多摩川の河川敷がキバナコスモスで覆われると何種もの蝶が飛来する。写真のツマグロ(褄黒:先が黒いという意)なのはメスだけであるが、温暖化のせいか、食草(スミレ類)のパンジーが園芸種として増えたせいか、この20~30年ですっかり定着して唯一このあたりの平地で見られるヒョウモンチョウ。

↑ コヒオドシ(フランス ブルゴーニュ地方 Vézelay 7月上旬)。フサフジウツギで吸蜜。撮影地は北緯47度46分(南樺太あたりに相当)で、日本では高山蝶の部類の本種も緯度の関係で平地に生息する。これは北海道の低山地~山地でも見られる現象。

↑ ツマムラサキマダラ(石垣島 10月上旬)。南国の蝶らしい紫色の幻光はとまった直後に翅を数回パタパタさせるチラ見せだけですぐ閉じてしまいなかなか撮影させてくれない。あとは飛んでいるところを写すしかないという困り者。

↑ ヒメウラナミジャノメ(神奈川県 4月下旬)。多摩川の土手と河川敷を紫色のナヨクサフジが埋め尽くす頃にヒメウラナミジャノメも急激に数を増やし、土手の下を歩くと次々と足下から飛び出すほどになる。地味な中にも蛇の目模様の中心部に青藍色に光り輝く鱗粉が数個ずつ上品なアクセントを添えている。

↑ クモマベニヒカゲ(長野県 7月下旬)。ヨツバヒヨドリで吸蜜。学生の時に駆け下りた岳沢(奥穂高岳と前穂高岳を結ぶ吊尾根の中間部付近から上高地に下る沢)を逆に上高地から上ってみると早々に足がつりかけたのでお花畑まで行くのを断念して途中のガレ場でみつけたクモマベニヒカゲ。

↑ リュウキュウムラサキ(石垣島 11月下旬)。センダングサで吸蜜。雨にたたられっぱなしの3日間ではあったが、いい角度でとまってくれた。角度が少しでもずれると光らない紫斑が出てきてしまう。

↑ クモマツマキチョウ(長野県 5月下旬)。前年に食草であるミヤマハタザオとのコラボ写真が撮れたので当年は時期を早めてスミレに合わせて北アルプス方面を訪れた。クモツキ(略称)も新鮮で、スミレの状態も良く、そして決定的なのはお天気に恵まれた(これが一番大事な要素)こと。

↑ ツマベニチョウ(石垣島 11月下旬)。南国情緒いっぱいの大型のシロチョウ。モンシロチョウやモンキチョウを見慣れているとシロチョウ類でこの大きさには度肝を抜かれる。赤いサンダンカの花を次から次へと移動しながらせわしげに吸蜜していた。

 

次は飛翔:

飛翔の撮影は狙ってうまく撮れるものでなくとにかく枚数を撮って一枚でもそこそこなのがあれば御の字なのです。満点の写真などありませんがそこそこなのを・・・

↑ トップはオオムラサキ(山梨県 7月上旬)。羽ばたくと「バサバサ」と音が聞こえるくらい迫力があります。オスの厚みと深みのある紫の輝きには国蝶の名にし負う華麗さを感じます。

↑ オオイチモンジ(長野県 7月下旬)。梓川沿いの河原を飛ぶオオイチモンジ。天気と発生のタイミングに恵まれたため一日に何回か出会うことができた。

↑ コムラサキ(長野県 7月下旬)。梓川沿いの河原にはヤナギが多く、従ってそれを食樹とするコムラサキも豊産していて河原を飛び回っている。4枚の翅がすべて幻光を発する角度・タイミングは極めて限られているのでたくさん撮るしかない・・・

↑ アサギマダラ(長野県 8月下旬)。マツムシソウが咲き乱れるお花畑をゆるやかに飛ぶ。しばらくの滞在の後に沖縄、台湾方面へと時には2000キロにも及ぶ渡りが待っている。

↑ アオスジアゲハ(神奈川県 10月下旬)。多摩川土手での一コマ。とにかく飛ぶのが速いので撮影は苦労するが一条の青のラインと黒の組み合わせは精緻過ぎてただただ造物主(?)の才能に恐れ入る。

↑ アイノミドリシジミ(長野県 7月下旬)。オス同士の卍巴と呼ばれる縄張りを巡るバトル。キラキラ輝きクルクル回っているうちに激しい追尾行動へと移行する。

↑ ルリウラナミシジミ(石垣島 11月下旬)。とまると必ず翅を閉じるので翅の表は飛翔時を撮るしかないがこれがまた異常に速い。そこで雨の小やみ~小雨状態の時に訪花するタイミングを狙った。気温も上がっていないのでいつものスピードに比較すると随分ゆっくりと飛んでくれたのでなんとか撮影できた。写真は比較的色合いが薄いメス。

↑ アオバセセリ(神奈川県 4月下旬)。ヒメウツギに飛来するアオバセセリ。飛来しそうな株に賭けてその前でねばっていたらお約束のごとく現れてくれた。

↑ キタキチョウ(神奈川県 7月上旬)。多摩川の川面を背に薄紫のアレチハナガサの群落上を飛ぶ鮮烈な黄。

↑ クモマツマキチョウ(長野県 5月上旬)。ピントが合わせづらい構図ではあったがそこそこな感じで撮影できた・・・というよりは実際には「写っていた」という方が正しい。

 

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