アカボシゴマダラの真実とは?

アカボシゴマダラは、私にとってはちょっと悩ましい存在なのです。上の写真は、昨年の生田緑地でのものです。
私自身は10年くらい前にその存在を知ったばかりで、その時ハイムの道路沿いのツツジの植え込みに混じったエノキのひこばえにいた幼虫を見たのが初めてでした。その後、白と黒のすっきりとした翅に裾模様の赤が印象的な成虫も見ました。このチョウの亜種というのが沖縄にもいるらしいのですが、しかし、このハイムの近辺にいるものはそれとは違い20年ほど前に誰かが人為的に日本に持ち込んだ大陸産のものとのことです。在来種であるゴマダラチョウやオオムラサキなどと競合関係がある(?)という理由で、その時には既に「要注意外来生物」*)に指定され、いわば悪者のレッテルを貼られていました。実際、繁殖力が強いらしく関東地方で徐々にその棲息範囲を広げているということでした。その後、ハイムでも時々成虫も見かけるようになったことは事実です。

*)現在は「特定外来生物」という呼称に変わり、法律で輸入はもちろん、飼育なども禁止されています。しかし、駆除対象にまではなってはいないようで、法律は見つけたら必ず駆除せよとまでは言っていません。したがって、野外にいるものを手を出さずに観察する分にはおそらく法律には触れない(?)と解釈してもいいのでしょう。

このアカボシゴマダラはゴマダラチョウやオオムラサキなどと同じでエノキを食樹とすることから、それら在来種と競合して駆逐しかねないというのが法律の趣旨と思われますが、果たしてそうだろうか?というのが私の率直な疑問なのです。最近ゴマダラチョウやオオムラサキなどの個体数は減少傾向で、その棲息範囲も狭くなっているという報告もあり、それはそれで心配の種ではありますが、だからといって、それは持ち込まれたアカボシゴマダラがその原因だと決めつけてしまうことはどうなのでしょうか。アカボシゴマダラの持ち込み以前に、それら在来種の棲む環境そのものが大きく変化したことにより既に徐々に個体数を減らしていたのではないだろうか、そして、その減少し始めた時期についてもアカボシゴマダラが入ってきた時期よりもずっと早かったのではないだろうか。根拠となるような客観的な資料などは何も持ってはいませんが、ただ個人的にそのように思っているのです。
今までオオムラサキやゴマダラチョウがたくさんいたのに、アカボシゴマダラが入ってきてから急に見る頻度が減ったとか、見なくなったというのであれば、その地域ではアカボシゴマダラが疑われても仕方ないでしょうが、どうもその因果関係はもう一度確認し直してみても良いのではなかろうかと思います。同じエノキを食樹とするということだけがこの競合・在来種駆逐という結論に結び付けられる要因となっているようにしか思えませんが、果たして実態はどうなのでしょうか。

いろいろ小難しいことを書きましたが、私個人としてはアカボシゴマダラの白と黒の翅に赤い裾模様がある夏型がチョウのデザインとしては非常にシンプルで気に入っています。また、林の中をゆったりと飛ぶ姿を見るのも好きです。しかし、春先に見られる春型にはこの赤星がなく、全体に白っぽくどことなく経帷子を着た幽霊のようで不気味な感じすらして、あまり好きではないのですが、勝手なものですね。そうは言いながら、私の趣味の漆塗りで夏型のアカボシゴマダラを制作したこともあります(下の写真)。黒は漆、白は卵殻、赤は貝(螺鈿)で表現しています。ただし、実際の目は青くはありません、アクセントのために敢えて青い貝を用いています。

ともかく、アカボシゴマダラについてはこの10年近く近辺のエノキのひこばえの観察は続けています。年によっては全く幼虫・成虫ともに見なかったこともありますが、昨年・一昨年と成虫だけでなく、久しぶりに何匹かの越冬前の幼虫も見ました。

この写真(昨年秋)の幼虫も3号棟西側のエノキのひこばえにいたもの。この時点では葉はもう食べつくしてほとんど残っていませんが、この葉が落ちるとともに木の根元に落ちて、枯葉の中で冬を越して翌春にエノキが芽吹きとともに這い上がってきて蛹になり、やがて成虫にとなることでしょう。少なくとも、私にはこの幼虫を殺すことはできませんでした。

(Henk)

参考 蝶図鑑 アカボシゴマダラ  ゴマダラチョウ  オオムラサキ

アカボシゴマダラの真実とは?” に対して2件のコメントがあります。

  1. 篠澤弘 より:

    私も赤星が好きです。春型には無い!!えーっ知らなかった!

    1. Henk より:

      篠澤さん
      お久しぶりです。
      そうなんです。春型には赤星がないか、あってもほんのりと赤と感じられるくらいなのです。夏型のくっきり、すっきりとしたデザインに比べ、春型は全体に白っぽく粉が吹いたような感じで同じ種類には見えません。添付した写真も生田緑地でのものです。
      Henk

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