飼育中のコムラサキ (6)

4月6日夕刻に蛹になって以降、17日夜までは殆ど変化はなかった。事前の情報では蛹の期間は約11日と聞いていたので、もうそろそろかとは思っていたが、羽化前の翅の色が透けて見えて来るなどの兆候は全く見られなかった。それが、18日朝になって急にうす緑がかったこれまでの色が心なしか灰色にくすんできたように見えた。しかし、その時点ではそれが羽化へのサインの一つだとは思わなかった。
9時半近くなって、蛹の腹部の節が1つずつ少し緩く伸びた感じになって、最後にブルっと自ら体を揺すったかと思うと、頭から背中にかけて大きる蛹の殻が一瞬で割れ、まるで寝袋からはい出すようにチョウの体がゴソゴソっと出てきた。あっという間の出来事。怪しい青い幻光がチラリと見えた、オスだ。
これまで何頭ものいろんなチョウの飼育をしたが、蛹の殻を割って出てくる羽化のこの瞬間を見たのは今回が初めてだった。実に偶然その場面に居合わせ久々の感動を覚えた。そろそろ三脚を用意しようかと思っていた矢先のことで、三脚は間に合わなかった。

これがコムラサキが羽化するその瞬間です(コマ落しで)。拡大して見られます。

蛹になるまで飼育中には常に新鮮なヤナギの枝を与えていた。しかし、蛹になってから10日あまり経ち多くの葉がご覧のようにガラガラに枯れてきた。途中で枝から落ちる葉もあったが、蛹になる前に幼虫自身が自ら糸を吐き補強したことはやはり重大な意味があったのだ。しっかりと枝についている。しかし、翅を伸ばそうと蛹の殻から移動をし始めた時は、如何に体重が軽いからと言っても枯れた葉に掴まれば落下もあり得るので気になった。結果的に大丈夫であったが、本能とは言え事前に落ちるかもしれない葉を補強するとは何という知恵か、驚かざるを得ない。水に挿しただけのヤナギだが、葉は殆ど枯れてしまったが水に入って部分からは何本もの白い根が伸びている。こちらの生命力も素晴らしい。

自ら吐いた糸で枝にしっかりと補強固定された葉柄

蛹がついていたヤナギの枝。葉は殆ど枯れているが、既にこんなに根が出ている。

(Henk)

参考 蝶図鑑 コムラサキ

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