科捜研の女 渡り蝶の秘密(6)4000万円の寄付

6年前、宮内あすかは病でアメリカでの手術に1億3000万円が必要だった。ウェブサイトで呼び掛けた結果、そのうち9000万円が集まっていた。残りあと4000万円が必要だった。
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「寄付金が入っていたかばんです。」(あすか)
「メモと一緒に 病室の前に置かれていたんですね?」(刑事)
「はい。ああ もう消えちゃったな。」(あすか)
「えっ?」
「あの頃は、海のにおいがしたんです。」(あすか)

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そのバッグを検査したところ、バッグから「ヒナヒルギ」の片鱗が出た。トカラ列島より南の島にごく局地的に生息する植物だ。

「教授は海浜性昆虫の研究のため度々南西諸島を訪れるそうですね。 6年前 4000万の入ったバッグを病室の前に置いたのはあなただったんですね?」
「そ… そんな」(教授)

「仕事柄、蝶に触れる機会も多いですよね。バッグには アサギマダラの鱗粉も付着していました。ファスナーの部分にごく微量に…。」

「そうか…。そういう事か。昆虫にはいつも真実を教えられる。僕らが知っている世界は世界の一つの姿に過ぎない。」(教授)

「それは どういう意味ですか?」(刑事)

「昆虫は人間が見る事はない光を見て人間には聞こえない音を聞いて僕たちより ずっと広い世界を生きている。そして 彼らには世界を美しくする力がある。」(教授)

教授はひとり事情がわかったような顔をしているが、他の者は何のことを言っているのかわからない。
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索条痕から採取した繊維、シルクの種類からメーカーが特定できた。「エトラ・プレミア」…高級ブランドだ。ネクタイとスカーフの最新ラインアップに同じシルクが使われていた。
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あすかの命を救った寄付は誰によるのものだったのか?
4千万円の入ったカバンを病室の前に置いたのは誰だったのか?
依然として謎は解けない。

~つづく~

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