多摩川 土手の草刈り

私事で恐縮ですが、筆者は今年の4月から中野島近辺の多摩川で「チョウのトランセクト調査」というものを行っています。この調査は日本チョウ類保全協会が主体となって全国規模でおこなているもので、私はご近所のSさんと一緒に中野島近辺の多摩川の土手沿いで約1.5kmの一定のコースを設定して、年間を通じて毎月4回定期的にどんな種類のチョウが、どれくらいの数、見られたかを歩きながら調査するものです。

4月5月はこのコースは歩くだけで楽しいコースだったのですが、6月に入るととたんにコースの一部はいろいろな草が猛然と茂り始め、普通に歩くことさえ難しくなってしまいました。イタドリを始めクズやアレチウリなどはそこらじゅうに大きな葉と蔓を伸ばし絡みつき、アシ・ススキなどの類は背丈以上に伸び、その葉の縁は鋭いナイフのようで、下手をすると顔や手が小さな切り傷だらけになります。それらをかき分け、踏み倒しながら、同時にチョウの観察をしながら(当然こちらが主目的です!)、汗だくになって深い草の海を漕いで進むことになるのです。
しかし、例年6月末から7月にかけてこの土手の草刈り作業があるのです。国土交通省管轄の堤防保全が目的の草刈りが年に数回あり、それによって一部のはびこった草は一旦刈り取られます。そうすると、また少しは歩きやすくなるのですが、同時にチョウたちにとっては棲息環境がガラリと変化してしまうことになるのです。土手の草をエサにして幼虫が成長するものにとっては、折角産み付けた卵・成長しかかった幼虫もろとも草を刈り取られ、仮に運よく生き残ったとしても今度はエサになる葉っぱがすぐには生え揃わない。つまり、餓死する危機にも直面することになるのです。

実際、6月末には一部既に草を刈り取られてところもあり、そこではこれまでたくさん見られたチョウが全く見られなくなってしまいました。かと思えば、近々刈り取られる場所で、せっせと卵を産んでいる気の毒なジャコウアゲハも見ました。この卵もできることなら救ってやりたいが、我が家の鉢植えのウマノスズクサだけではとても十分なエサにはなりそうにありません。毎年、この草刈りで飼育中の幼虫のエサ確保に電車に乗ってまであちこち走り回っていたことを思い出しました。また今年もその時期が来たか・・・。関連の写真をご覧ください。

ジャングルのような土手沿いのコース(背丈を越える高さの草。画面中央が目の高さ。)

7月6日に綺麗に刈り取られた後の土手(上とほぼ同じ場所)。殆どチョウは見当たらない。

何も知らず、すぐ刈り取られるところで産卵中のジャコウアゲハ(筆者の足元)

(Henk)

参考 蝶図鑑 ジャコウアゲハ

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