一時的なオアシス 11

やはり自然界は厳しかった。
鳥に襲われないように、ハチなどに寄生されないようにと掛けたネットを脱走して外で蛹になったまではよかったが、この蛹は二つとも羽化を目前にして死んでしまった。どこかの段階で天敵に寄生されていたのだ。自然界で卵から羽化まで何事もなく進むことは容易なことではないようだ。大半の卵が成虫にまでなることはできない。産み付けられたすぐの卵を狙う寄生バチも見た。幼虫に卵を産み付けようとする寄生バチも見た。鳥に襲われた幼虫も見た。さらに、蝶は綺麗と言いながら一方では幼虫を見つけては親の仇のように捻り潰してしまう人間もたくさんいるのが現実だ。今、ただ優雅に飛んでいるだけのように見えるチョウたちは皆こうした厳しい自然界の弱肉強食の世界をうまく搔い潜ってきた強運の持ち主たちなのだ。

カラスアゲハの初めての羽化を直に見ようと、蛹を壁から外して飼育箱に入れたまではよかったが、その時点でちょっと気になっていた蛹の微かな黒ずんだ斑点がだんだんとはっきりして、飼育箱に移してから二日目にはもう蛹全体が茶色に変色してしまった。この時点で蛹は完全に死んでいた。そしてしばらくすると蛹の殻を食い破り次々と白い蛆が出てきた。二つの蛹から合計8つの蛆。どうもネットを掛けるよりももっと早い段階でヤドリバエ二寄生されていたようだ。その蛆もあっという間に茶色の俵状のずんぐりして蛹に変わった。ここまでのヤドリバエの成長は驚くべき速さだ。

カラスアゲハの羽化を期待していただけに大いにガッカリしていたが、もう一つ新たに見つけたカラスアゲハの終齢幼虫はサンショウの枝ごとすぐ飼育箱にいれた。この幼虫はもう一つ別のサンショウの木からなので、運が良ければ寄生を免れているかもしれない。淡い期待をもって観察を続けよう。

(Henk)

参考 蝶図鑑  カラスアゲハ

 

 

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